最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)281号 判決 1967年6月30日
上告人
株式会社東京温泉
右代表者
上田弘子
右訴訟代理人
能勢喜八郎
被上告人
杉本明美
右訴訟代理人
吉田正文
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人能勢喜八郎の上告理由について。
「失火ノ責任ニ関スル法律」は、失火者その者の責任条件を規定したものであつて、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではないから、失火者に重大な過失があり、これを使用する者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法七一五条により賠償責任を負うものと解すべきであつて、所論のように、選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない(大正二年二月五日大審院判決・民録一九輯五七頁参照)。論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)